さて、前回と前々回で5.9号機に追加される仕様の中の、おもに通常区間と有利区間に関しての解説を行ってきました。
その他にも細かい規制の追加はあるのですが、さしあたって重要ではないので、また別の機会にお話しするとします。

そもそも、5.9号機の規制は、「5.5号機でもあった規制」にプラスされるものなのです。
では、5.5号機にはどのような規制があったのでしょうか。
今回はそちらについての解説を行っていきます。

①高純増AT機の高ベース化

これは、5.5号機よりも前の機種です。
規制ではありませんが、必然的にこうなった、というべきでしょうか。
純増2.5枚~3.0枚/1GのいわゆるAT機が対象にあたります。

“必然的にこうなった”のは“出玉率の試験の方法が変わった”のです。

そもそも出玉率とはどうやって求めるのでしょうか。
例えば、1000円で50枚のメダルが借りられるホールで、10000円使い、常に3枚掛けの機種を
最終的に5000ゲーム遊技して、1000枚のメダルを交換したと仮定すると、その機種の出玉率は…
【103.33%】となります。
計算方法はこうです。
・出玉率はOUT枚数(払い出された枚数)÷IN枚数(台に入れた枚数)
で求めることができます。
まず、IN枚数=自分が台に入れた枚数は何枚でしょう。
3枚掛けの機種を5000ゲーム遊技したので「5000×3」で「15000枚」です。
15000枚を台に入れたのですが、自分は10000円、つまり500枚のメダルしか借りていません。
残り14500枚はどこから来たのでしょう。
もちろん、台から払い出されたのです。
そして、1000枚交換したので、最終的には14500枚と1000枚の合計、15500枚が払い出されたことになります。
と、いうことで出玉率は「15500/15000=1.03333…≒103.33%」となります。

ですが、出玉率の試験ではこうはいきません。
それが、“リプレイの存在”です。
試験でのリプレイの扱いは0枚投入の0枚払い出しとなるのです。
例えば、先ほどの機種で1000回リプレイを引いた時の出玉率はいくらでしょう。
まず、投入枚数は1000回リプレイを引いた分は0枚なので実際は4000×3で12000枚投入したことになります。
払い出し枚数も残り11500枚+1000枚で12500枚となります。
その場合、出玉率は「12500/12000=1.04166…≒104.17%」で約104.17%と、普通に計算した場合よりも高くなります。

ここまで来て、「で、高純増AT機はなぜ高ベースになったの?」と言うことですが、
試験方法が、以前はフリー打ち(押し順、目押しも適当)だったので、変則押し時にたまにベルが揃ってだいたい60%くらいの出玉率がありました。
出玉率の下限は55%なのでギリギリセーフでした。
しかし、2014年9月16日に試験方法が、“出玉率が最低となる遊技方法で試験する”となりました。
さて、どうなったのでしょう。
高純増AT機は、通常時でもリプレイ確率が高いですよね?
ここでは化物語を例に挙げましょう。
化物語ではリプレイ確率が合算で1/2.47となっています。
となると、リプレイ以外の小役確率が1/1.68くらいです。
化物語では最低出玉率となるように遊技すると、ベルは揃いません。0枚か1枚の払い出しです。
この遊技方法を1000回行ったとすると、リプレイが403回、それ以外が597回となります。
普通に計算すると投入枚数が1000×3で3000、払い出しがリプレイ=403×3=1209枚、
ベルが1/8で1枚、7/8で0枚なので597×1×1/8+597×0×7/8=74.7枚。
出玉率は「(1209+74.7)/3000≒42.79%」となる(これでも55%を下回っているのですが…)はずですが、
リプレイは0枚INの0枚OUTです。
投入枚数は「(1000-403)×3=1791枚」、払い出しはリプレイの1209枚が0となり、ベルだけの74.7枚。
出玉率は「74.7/1791=0.0417≒4.17%」
…出玉率の下限は55%です。4.17%の出玉では到底届きません。
この4.17%を55%に届かせるためにはリプレイ以外の小役が通常時(出玉率が最低となる打ち方)にも揃う必要があります。
そのため、最低の打ち方でも55%に届かせるため、通常時もベルが揃うようになり、ベースが髙くなったのです。

長く説明してきましたが、5.5号機の規制の話に戻ります。

②純増枚数が2.0枚/1G未満

この規制が適用されたのは2015年12月1日からです。
ということで、もはや3.0枚クラスの高純増機さえも作れなくなりました。

③出玉制御は主基板で行う

さて、どういうことでしょう。
そもそもパチスロには「主基板」と「周辺基板」の2つの基板があります。
主基板では小役の抽せん、リールの制御を行って、周辺基板では演出の抽せんを行っています。
では高確率やチャンスゾーン、ARTの抽せんはどこで行っていたのでしょう。
5.5号機までは「周辺基板」で行っていました。
しかし、5.5号機となってからは「主基板」で行わなければならなくなったのです。
パチスロを打っていて、払い出し枚数が表示されるセグが良く分からない感じで光っているのを見たことがありませんか?
あれは、主基板が出玉を管理していることを証明するためです。

④その他、ペナルティ、天井機能の抑制

ペナルティは“遊技の公正を害する調整”ではないかと指摘され、ペナルティも禁止となりました。
天井機能も、たとえば天井到達でARTが5セット確定とかになってしまうと、のめり込みにつながるとして
天井機能も抑制されました。

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以上、5.5号機の大きな規制の“一部”です。
これでも一応一部なのです。
他にもありますが。

5.9号機になる未来でも、この規制はこのままです。
①の高純増機の高ベース化は②の純増規制があるので5.5号機の時点で無理ですがね…。

こういった規制は日々追加されていきます。
その中でも各遊技機メーカーの開発者は次々に新しく面白いものを遊技者に提供し続けているのです。

それではまた次回に。